しっぽを追いかけて

ぐるぐるしながら考えています

Unity と猫の話題が中心   掲載内容は個人の私見であり、所属組織の見解ではありません

ブログ凍結

長らく続けて来た本ブログ、いったん凍結しようと思う

理由はこのあとに続く(長文注意)

UX には「落とし穴」がある

例えばゲーム開発の現場で、分析や数値化、改善プロセスなどのいわゆる「UX」の手法はほとんど用いられていない

⋯にも関わらず、傑作と呼ばれるゲームは多くの人を夢中にさせている

それがどうしてなのか?⋯そのことがようやくわかってきた

ゲームや漫画、アニメなどの制作では UX でよくやる「ターゲットユーザー」を設定せず、ディレクター自身が主観的な感覚でよいと思うモノづくりが行われる

つまり、「他の誰か」のためではなく、「自分たち」がよいと思うモノを作るのである

ある程度世間の反応を気にして調整する部分があっても、「ターゲットユーザー」みたいに完全に仮想的な人物を設定して判断基準にすることはない

そういった主観的な感覚によるモノづくりが、「楽しい」とか「面白い」といったユーザーの感情的な反応を引き出し動機付けを高めるために欠かせないのである

これを UX でよく活用される「ターゲットユーザー」や「カスタマージャーニーマップ」、数値化された各種評価指標などを利用しだした瞬間に、実在しない人物による評価にすり替わってしまう

このアプローチでは、人間の理性的な側面、認知とかわかりやすさ、使いやすさには大きな改善が期待できるものの、動機付けなどの感情的な側面の改善は失敗する

心理学を勉強したことのある人ならわかると思うが、感情というのは文脈に大きく依存して変化するので、特定の要素を取り出して別の文脈に導入するような「切り貼り」をしてしまうと期待通りの結果にならないのだ

傑作のゲームや漫画、映画の面白いと思われる要素を取り出して、自身のモノづくりにそのまま導入しても思ったほど面白くならなかった⋯という例はものすごく多い

文脈も含めた文字通りリアルなすべての要素を総合的に、つまり主観的に体験して調整するということを行わないとうまく機能しない

このことに気づいたので、UX に対する興味がなくなってしまったし、その代わりに他の誰かではなく「自分にとって良いもの」を追求するアプローチに関心が移った

テクノロジーに新鮮な発見がなくなった

実装に関わるテクノロジーの研究についても、最近は新鮮な発見がなくなってきた

以前はもっと驚きや達成感が得られたが、最近は過去の経験の延長のような感じになっていた

難しいことを実現しようとする場合でも、単に時間がかかる、というだけでだいたい何をどうすればよいか早い段階で目途がついてしまう

この分野はわざわざブログの記事にしてまで追求したいという気持ちがなくなってきてしまった

興味の中心は未知の領域へ

自分にとって「面白いもの」「楽しいもの」といった魅力的なコンテンツを追求するという取り組みには、これまで培ってきたアプローチがまるで通用しない

答えは自分の外ではなく、自らの価値観の中にあるので、ググったところで答えは見つからない

数値化や各種指標を適用して現状の制作物の評価はできたとしても、どのように改善すればよいのかはわからないのだ

代わりに必要なのは、実は「質の高い、バラエティに富んだ大量のインプット」である

傑作を生みだした漫画家、イラストレーター、映画監督などは意識しているかどうかに関わらず、だいたい名作と呼ばれるコンテンツを大量に鑑賞している

そうしたインプットによって、コンテンツ作りのヒントが蓄積していくだけでなく、自分にとって魅力的なものがいったいどのようなものであるかのイメージが具体化・精緻化されていくのだ

何が自分の求めているものか」⋯そうした借り物ではない自身の主観的な感性こそが傑作を生み出すための答えである

自らが作り上げた感性が鋭敏であれば、コンテンツのどこをどうしたいかといった改善案は、分析やブレスト、理屈をこねくり回すこともなしに、まるで「自転車を運転するかのように半自動的にひらめく

落ち着いていて生活コストが安く住み慣れた「仙川」から、たくさんのお店や人が密集し、おもちゃ箱をひっくり返したかのような雑多なものであふれた「吉祥寺」に引っ越したのは、このインプットを期待したからだ

現在の興味の中心は、このブログでテーマとしていた UX だとか テクノロジー とかけ離れてしまった

そもそも個人的な趣向についてここで投稿していくのは気が進まない

⋯そういったわけでいったんこのブログを凍結することにした